【オリジナル問題】複素数が実数になる条件と、面積の無限級数

問題

今回は、複素数と無限等比級数を組み合わせた問題です。 定石を用いた基礎的な変形、規則性を見抜く考察力、最後までやり抜く計算力などの幅広い力を要するため、応用レベルに位置する問題でしょう。

問題文

前半の実数になる条件から次の条件式を得るパートと、後半の面積の無限級数を計算するパートに分かれています。 前半部分はかなり基礎的な変形なので、まずは複素数の処理を乗り越えたいです。

(STEP1) f(z)f(z) が実数になる条件からttの値を求める

複素数 f(z)f(z) が実数になるための条件は、「虚部が 00 になる」ことです。 まずは与えられた f(z)f(z) を実部と虚部に整理します。

z=cos⁡t+isin⁡tz = \cos t + i \sin t を代入し、ド・モアブルの定理 (z2=cos⁡2t+isin⁡2tz^2 = \cos 2t + i \sin 2t) を使って展開します。

f(z)=(cos⁡2t+isin⁡2t)−(2+2i)(cos⁡t+isin⁡t)+i2=(cos⁡2t−2cos⁡t+2sin⁡t)+i(sin⁡2t−2sin⁡t−2cos⁡t+2)\begin{aligned} f(z) &= (\cos 2t + i \sin 2t) - (\sqrt{2} + 2i)(\cos t + i \sin t) + i\sqrt{2} \\[20pt] &= (\cos 2t - \sqrt{2}\cos t + 2\sin t) + i(\sin 2t - \sqrt{2}\sin t - 2\cos t + \sqrt{2}) \end{aligned}

虚部が 00 になればよいので、次の方程式が立ちます。

sin⁡2t−2sin⁡t−2cos⁡t+2=0\sin 2t - \sqrt{2}\sin t - 2\cos t + \sqrt{2} = 0

倍角の公式 sin⁡2t=2sin⁡tcos⁡t\sin 2t = 2\sin t\cos t を使って(少し気づきにくいですが)因数分解を進めます。

2sin⁡tcos⁡t−2cos⁡t−2sin⁡t+2=02cos⁡t(sin⁡t−1)−2(sin⁡t−1)=0(2cos⁡t−2)(sin⁡t−1)=0\begin{aligned} 2\sin t \cos t - 2\cos t - \sqrt{2}\sin t + \sqrt{2} &= 0 \\[20pt] 2\cos t (\sin t - 1) - \sqrt{2}(\sin t - 1) &= 0 \\[20pt] (2\cos t - \sqrt{2})(\sin t - 1) &= 0 \end{aligned}

したがって、条件を満たすのは以下の2パターンです。

sin⁡t=1またはcos⁡t=22\sin t = 1 \quad \text{または} \quad \cos t = \frac{\sqrt{2}}{2}

ここで、tt の範囲を確認します。 t=−log⁡(x2+y2)t = -\log(x^2+y^2) であり、点 (x,y)(x,y) は半径1以下の円の内部(かつ真数条件から原点ではない)を動くため、0<x2+y2≤10 < x^2+y^2 \le 1 です。つまり t≥0t \ge 0 となります。 この範囲で tt の値を小さい順に求めていくと、以下のようになります。

t=π4,π2,7π4,9π4,5π2,15π4,…t = \frac{\pi}{4}, \frac{\pi}{2}, \frac{7\pi}{4}, \frac{9\pi}{4}, \frac{5\pi}{2}, \frac{15\pi}{4}, \dots

これで、xyxy平面上の同心円の半径が得られました。 ここで、問題文後半の同心円とその面積を図示すると下図のようになります。 問題文

(STEP2) 面積 SkS_k の規則性を考察する

同心円についての様子が分かったところで、問題で設定されている面積についての考察をしていく必要があります。領域の面積 SkS_k を求め、無限級数の計算をしていきましょう。

まず、円の半径を表す文字を定義しておきましょう。 円 CmC_m の半径を rmr_m とします。問題文より、円は「半径が大きい順」に並んでいるため、r1>r2>r3>…r_1 > r_2 > r_3 > \dots となります。 また、t=−log⁡(x2+y2)t = -\log(x^2+y^2) の関係式において、x2+y2=r2x^2+y^2 = r^2 なので t=−log⁡(r2)t = -\log(r^2) より r2=e−tr^2 = e^{-t} と変形できます。

この式から、半径 rr が大きいほどtt の値が小さくなることがわかります。 そこで、前半で求めた tt の条件を満たす解を、小さい順に t1,t2,t3,…t_1, t_2, t_3, \dots とおくと、rm2=e−tmr_m^2 = e^{-t_m} という関係が成り立ちます。

この設定を使って、領域の面積 SkS_k を考えていきましょう。 SkS_k は「円 C2k−1C_{2k-1} の内部かつ円 C2kC_{2k} の外部」の面積なので、次のように計算できます。

Sk=π(r2k−12−r2k2)=π(e−t2k−1−e−t2k)S_k = \pi(r_{2k-1}^2 - r_{2k}^2) = \pi(e^{-t_{2k-1}} - e^{-t_{2k}})

実際に tt の値を小さい順に列挙し、S1S_1 から S6S_6 までを表にまとめて計算してみます。

面積使用する tt のペア計算結果S1,S2,S3S_1, S_2, S_3 との関係
S1S_1t1=π4,t2=π2t_1=\frac{\pi}{4}, t_2=\frac{\pi}{2}π(e−π4−e−π2)\pi(e^{-\frac{\pi}{4}} - e^{-\frac{\pi}{2}})S1S_1
S2S_2t3=7π4,t4=9π4t_3=\frac{7\pi}{4}, t_4=\frac{9\pi}{4}π(e−7π4−e−9π4)\pi(e^{-\frac{7\pi}{4}} - e^{-\frac{9\pi}{4}})S2S_2
S3S_3t5=5π2,t6=15π4t_5=\frac{5\pi}{2}, t_6=\frac{15\pi}{4}π(e−5π2−e−15π4)\pi(e^{-\frac{5\pi}{2}} - e^{-\frac{15\pi}{4}})S3S_3
S4S_4t7=17π4,t8=18π4t_7=\frac{17\pi}{4}, t_8=\frac{18\pi}{4}π(e−17π4−e−18π4)\pi(e^{-\frac{17\pi}{4}} - e^{-\frac{18\pi}{4}})e−4π⋅π(e−π4−e−π2)=e−4πS1e^{-4\pi} \cdot \pi(e^{-\frac{\pi}{4}} - e^{-\frac{\pi}{2}}) = e^{-4\pi}S_1
S5S_5t9=23π4,t10=25π4t_9=\frac{23\pi}{4}, t_{10}=\frac{25\pi}{4}π(e−23π4−e−25π4)\pi(e^{-\frac{23\pi}{4}} - e^{-\frac{25\pi}{4}})e−4π⋅π(e−7π4−e−9π4)=e−4πS2e^{-4\pi} \cdot \pi(e^{-\frac{7\pi}{4}} - e^{-\frac{9\pi}{4}}) = e^{-4\pi}S_2
S6S_6t11=26π4,t12=31π4t_{11}=\frac{26\pi}{4}, t_{12}=\frac{31\pi}{4}π(e−26π4−e−31π4)\pi(e^{-\frac{26\pi}{4}} - e^{-\frac{31\pi}{4}})e−4π⋅π(e−10π4−e−15π4)=e−4πS3e^{-4\pi} \cdot \pi(e^{-\frac{10\pi}{4}} - e^{-\frac{15\pi}{4}}) = e^{-4\pi}S_3

表を見ると、S4,S5,S6S_4, S_5, S_6 はそれぞれ S1,S2,S3S_1, S_2, S_3 の e−4πe^{-4\pi} 倍になっていることが明確にわかりますね。

周期性についての証明

この「3つ周期で e−4πe^{-4\pi} 倍になる」という性質が、この先もずっと続くことを厳密に証明しておきましょう。

前半で解いた三角方程式の解は、整数 n≥0n \ge 0 を用いて以下の3グループで表すことができます。

  • π4+2nπ\frac{\pi}{4}+2n\pi
  • π2+2nπ\frac{\pi}{2}+2n\pi
  • 7π4+2nπ\frac{7\pi}{4}+2n\pi

これらを小さい順に並べた数列が tmt_m です。 式を見ると、nn が 11 増えるごとに、すべての解が 2π2\pi ずつ増加します。そして 2π2\pi の区間の中には常に3つの解が存在します。 したがって、任意の自然数 mm について、3つ先の項は元の項に 2π2\pi を足したものになります。

tm+3=tm+2πt_{m+3} = t_m + 2\pi

これを用いると、6つ先の項は 2π2\pi を2回足すことになるため、

tm+6=tm+3+2π=tm+4πt_{m+6} = t_{m+3} + 2\pi = t_m + 4\pi

となります。 これを面積の式 Sk=π(e−t2k−1−e−t2k)S_k = \pi(e^{-t_{2k-1}} - e^{-t_{2k}}) に適用し、33 つ先の面積 Sk+3S_{k+3} がどうなるか計算してみます。

Sk+3=π(e−t2(k+3)−1−e−t2(k+3))=π(e−t2k+5−e−t2k+6)\begin{aligned} S_{k+3} &= \pi(e^{-t_{2(k+3)-1}} - e^{-t_{2(k+3)}}) \\[20pt] &= \pi(e^{-t_{2k+5}} - e^{-t_{2k+6}}) \end{aligned}

ここで先ほどの tm+6=tm+4πt_{m+6} = t_m + 4\pi の関係(添え字を合わせて t2k+5=t2k−1+4πt_{2k+5} = t_{2k-1} + 4\pi および t2k+6=t2k+4πt_{2k+6} = t_{2k} + 4\pi)を代入します。

Sk+3=π(e−(t2k−1+4π)−e−(t2k+4π))=π(e−t2k−1⋅e−4π−e−t2k⋅e−4π)=e−4π⋅π(e−t2k−1−e−t2k)=e−4πSk\begin{aligned} S_{k+3} &= \pi(e^{-(t_{2k-1}+4\pi)} - e^{-(t_{2k}+4\pi)}) \\[20pt] &= \pi(e^{-t_{2k-1}} \cdot e^{-4\pi} - e^{-t_{2k}} \cdot e^{-4\pi}) \\[20pt] &= e^{-4\pi} \cdot \pi(e^{-t_{2k-1}} - e^{-t_{2k}}) \\[20pt] &= e^{-4\pi}S_k \end{aligned}

これで、数列 SkS_k が「3項進むごとに e−4πe^{-4\pi} 倍になる」ということが証明できました。

(STEP3)無限級数の計算

規則性が証明できたので、あとは仕上げです。 求める無限級数 ∑k=1∞Sk\sum_{k=1}^{\infty} S_k は、S1,S2,S3S_1, S_2, S_3 の3つの項を1セットとしてまとめることで、公比 e−4πe^{-4\pi} の無限等比級数の和として計算できます。

∑k=1∞Sk=(S1+S2+S3)+(S4+S5+S6)+…=(S1+S2+S3)+e−4π(S1+S2+S3)+…=(S1+S2+S3)∑m=0∞(e−4π)m\begin{aligned} \sum_{k=1}^{\infty} S_k &= (S_1 + S_2 + S_3) + (S_4 + S_5 + S_6) + \dots \\[20pt] &= (S_1 + S_2 + S_3) + e^{-4\pi}(S_1 + S_2 + S_3) + \dots \\[20pt] &= (S_1 + S_2 + S_3) \sum_{m=0}^{\infty} (e^{-4\pi})^m \end{aligned}

公比 e−4πe^{-4\pi} は 0<e−4π<10 < e^{-4\pi} < 1 を満たすため、この級数は収束します。無限等比級数の和の公式より、

∑m=0∞(e−4π)m=11−e−4π\sum_{m=0}^{\infty} (e^{-4\pi})^m = \frac{1}{1 - e^{-4\pi}}

あとは表で求めた S1,S2,S3S_1, S_2, S_3 の値を足し合わせて分子に乗せるだけです。

S1+S2+S3=π(e−π4−e−π2+e−7π4−e−9π4+e−5π2−e−15π4)S_1 + S_2 + S_3 = \pi \left( e^{-\frac{\pi}{4}} - e^{-\frac{\pi}{2}} + e^{-\frac{7\pi}{4}} - e^{-\frac{9\pi}{4}} + e^{-\frac{5\pi}{2}} - e^{-\frac{15\pi}{4}} \right)

よって、求める無限級数の値は以下のようになります。

∑k=1∞Sk=π(e−π4−e−π2+e−7π4−e−9π4+e−5π2−e−15π4)1−e−4π\sum_{k=1}^{\infty} S_k = \frac{\pi \left( e^{-\frac{\pi}{4}} - e^{-\frac{\pi}{2}} + e^{-\frac{7\pi}{4}} - e^{-\frac{9\pi}{4}} + e^{-\frac{5\pi}{2}} - e^{-\frac{15\pi}{4}} \right)}{1 - e^{-4\pi}}

これが答えです。 複雑な条件式から始まりましたが、一つ一つの処理はシンプルで、丁寧に解を並べて図形的な規則性を見抜けば、きれいな等比級数に落とし込める問題でした。 \\ \\


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