高校数学で多くの中高生を悩ませるのが、3次以上の多項式の因数分解です。
2次式までは「たすき掛け」などの公式で乗り切れましたが、高次方程式になると急に手が止まってしまう人も多いのではないでしょうか。
3次式の因数分解、本当に苦手です…。
公式も複雑だし、どうやって計算の糸口を見つければいいのか全く分かりません。
そこで強力な武器として登場するのが 因数定理です。
因数定理の仕組みさえ理解してしまえば、パズルを解くようにスルスルと因数分解ができるようになります。
丸暗記ではなく、「なぜそうなるのか」という仕組みから一緒に紐解いていきましょう!
1. 因数定理とは?
因数定理を一言で言うと、「代入して0になる数を見つければ、因数が1つ分かる」 という定理です。
数式で表すと、多項式 P(x) について以下のようになります。
P(k)=0 となるような数 k があるとき、P(x) は (x−k) を因数にもつ。 (つまり、(x−k) で割り切れる)
代入して0になる数…?
ちょっと具体例で見てみたいです!
もちろんです。例えば、次のような3次式を因数分解したいとしましょう。
P(x)=x3−2x2−x+2
試しに x=1 を代入してみます。
P(1)=13−2⋅12−1+2=1−2−1+2=0
計算結果が見事に 0 になりました。
因数定理によれば、この $P(x)$ は $(x - 1)$ で割り切れる、つまり $(x - 1)$ を因数に持つことが確定します。
なるほど!1つ因数が見つかれば、あとは元の式を (x−1) で割り算すればいいんですね。
残りは x2−x−2 になるから、それをさらに因数分解して (x−1)(x−2)(x+1) になりますね。
2. なぜ成り立つ?「剰余の定理」とのつながり
代入して 0 になったら (x−k) で割り切れるのはすごく便利ですが、
そもそも、なんでそんなことが起きるんですか?
素晴らしい疑問です。
その理由は因数定理の親戚である 剰余の定理 にあります。
算数では、
「割られる数 = 割る数 × 商 + 余り」でした。
多項式 P(x) を (x−k) で割ったときの商を Q(x)、余りを R(ただの数字)とすると、次のように書けます。
P(x)=(x−k)Q(x)+R
さて、この式の両辺に $x = k$ を代入すると、どうなると思いますか?
えーっと、(x−k) の部分が (k−k) になるから、0 になりますね。
そうすると、掛け算されている Q(k) ごと消えますね。
P(k)P(k)P(k)=(k−k)Q(k)+R=0⋅Q(k)+R=R
「$x$ に $k$ を代入した計算結果」は「$(x - k)$ で割ったときの余り」と全く同じになる。これが 剰余の定理 です。
ということは…
もし $P(k) = 0$ になったとしたら、それは「余り $R$ が 0 である」ってことですか?
その通りです。「余りが 0」は、すなわち 「割り切れた」 ことを意味します。
これが、因数定理が成り立つ仕組みです。
3. では、「代入して0になる数」はどう探す?
仕組みはバッチリ分かりました!
でも、「代入して 0 になる数 k」を見つけるのが大変そうです。
1とか2とか、ひたすら適当に代入して探すしかないんですか?
安心してください。
実は、代入して 0 になる(有理数の)候補は、式からわかるんです。これを 有理根定理 と呼びます。
代入して 0 になる有理数 k の候補は、次の法則で絞り込めます。
k=±最高次項の係数の正の約数定数項の正の約数
例えば、先ほどの式 P(x)=1x3−2x2−x+2 で考えてみましょう。
- 最高次項(x3)の係数は 1 → 約数は 1 のみ
- 定数項は 2 → 約数は 1 と 2
したがって、候補となる数は ±11,2、つまり 1,−1,2,−2 の4つしかありません。
4. 有理根定理の証明
最高次の係数と定数項だけで候補が絞り込めるんですね!
でも、さっき「なぜ?」を考えるのが大事って言ってましたよね。
これもちゃんと理由を知りたいです!
素晴らしいですね。
では、なぜこの分数で候補が絞り込めるのか、3次方程式の場合について証明してみましょう。
一般的な整数の係数を持つ3次方程式を次のように置きます。
(a,b,c,d は整数とし、a=0 とする)
ax3+bx2+cx+d=0
この方程式が、有理数(分数)の解 x=pq を持つと仮定しましょう。
ここで、p と q は 「互いに素な整数」であるとします。
64 みたいな分数じゃなくて、ちゃんと 32 まで約分した状態からスタートするってことですね。
その通りです。では、この $x = \frac{q}{p}$ を方程式に代入してみましょう。
a(pq)3+b(pq)2+c(pq)+d=0
両辺に p3 を掛けます。
aq3+bq2p+cqp2+dp3=0
(STEP1) q(分子)が定数項 d の約数になる理由
まずは、この式から d が含まれる項だけを右辺に移行してみましょう。
aq3+bq2p+cqp2=−dp3
左辺はすべて q を持っているので、q でくくることができます。
q(aq2+bqp+cp2)=−dp3
ここで、等式の意味を考えてみてください。
左辺は「$q \times (\text{整数})$」の形をしているので、全体として $q$ の倍数 ですよね。
ということは、等しいはずの右辺 $-dp^3$ も $q$ の倍数 でなければなりません。
なるほど。右辺の −dp3 が q の倍数……。
あっ!でも最初に「p と q はこれ以上約分できない(互いに素)」って決めましたよね!
$p$ と $q$ は共通の約数を持たないので、$p^3$ の中に $q$ の要素は全く入っていません。
それにもかかわらず −dp3 が q の倍数になるということは、d 自体が q で割り切れなければならない のです。
つまり、「q は d(定数項)の約数である」ことが証明されました。
(STEP2) p(分母)が最高次項 a の約数になる理由
もしかして、a についても同じように考えればいいんですか?
はい、今度は $a$ が含まれる項だけを残して、残りを右辺に移行してみましょう。
先ほどの式 aq3+bq2p+cqp2+dp3=0 から、
aq3=−bq2p−cqp2−dp3
今度は右辺がすべて p を持っているので、p でくくります。
aq3=−p(bq2+cqp+dp2)
右辺は「p×(整数)」なので p の倍数 です。
したがって、左辺の aq3 も p の倍数 になります。
しかし、p と q は互いに素でした。
なので、q3 の中に p の要素はありません。
結論として、a が p で割り切れる しかなく、「p は a(最高次項の係数)の約数である」ことが証明されました。
解 x=pq の分母 p は「最高次項の約数」で、分子 q は「定数項の約数」に必ずなるから、
さっきの公式の形になるんですね!
「公式として暗記する」のと「証明を通じて仕組みを知る」のとでは、納得感が全く違いますよね。
数学はこうやって、すべてのルールが論理で繋がっている美しい学問なんです。
まとめ
今回は、高次式の因数分解に欠かせない 因数定理 と、その解の絞り込み方について深く解説しました。
- 因数定理: P(k)=0 なら、多項式は (x−k) で割り切れる。
- 仕組み: 「割られる数 = 割る数 × 商 + 余り」の式に代入すると、余りが 0 になることが証明できる(剰余の定理)。
- k の探し方(有理根定理): k=±最高次項の係数の約数定数項の約数 で候補を絞る。
- なぜ絞れるか: 解を分数 pq と置いて方程式に代入し整理すると、分子 q は定数項の約数に、分母 p は最高次項の係数の約数にならざるを得ないことが証明できる。
公式の丸暗記ではなく、導けるようになれば、テスト本番でド忘れしても自分で式を作ることができます。
ぜひ、お手元の問題集で実際に「代入して0になる数」を探す練習をしてみてください。
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